講師
【第1部】 信州大学 医学部 麻酔蘇生学講座 教授 川真田 樹人 氏
【第2部】 独立行政法人国立病院機構 相模原病院 臨床研究センター 病態総合研究部 研究部長 福井 尚志 氏
【第3部】 独立行政法人国立病院機構 相模原病院 臨床研究センター 診断・治療研究室 室長 鈴木 隆二 氏
【第4部】 尼崎中央病院 大阪大学付属病院疼痛医療センター 三木 健司 氏
【第5部】 司誠会野上病院 心療内科 長井 信篤 氏
【第6部】 東京大学医学部附属病院 麻酔科・痛みセンター 助教 住谷 昌彦 氏
【第7部】 熊本保健科学大学大学院 保健科学研究科 教授 吉村 惠 氏
日時 平成22年4月27日(火)10:30~17:30 28日(水)10:00~15:20
会場 [東京・五反田] ゆうぽうと 5F たちばな
聴講料 1名につき73,500円(消費税込み/昼食・資料付き)
〔1社2名以上同時申込の場合1名につき63,000円〕
プログラム
27日【10:30~12:00】
【第1部】 動物モデルからみた慢性疼痛の機序と薬物療法の可能性
信州大学 川真田 樹人 氏
【講座主旨】
慢性疼痛の新たな治療戦略を考えるためには、痛みの臨床に即した動物モデルの開発が不可欠である。そこでこれまで、各種疼痛モデル動物が開発されてきた。本講演では、ラットやマウスを用いた手術後痛、炎症性疼痛、神経障害性疼痛、そして骨癌性疼痛モデルを用いた研究から、各種疼痛の生理学的、薬理学的あるいは分子生物学的な疼痛機序の基盤を紹介し、新たな薬物療法の可能性を探りたい。
【講演内容】
1.なぜ慢性疼痛の動物モデルが重要か?
(1)臨床研究と基礎研究の乖離(術後痛を例にとって)
(2)餅は餅屋に-適切な動物モデルから
preclinicalなヒトボランティア研究へのトランスレーション研究の重要性
(3)鎮痛薬の治験が失敗する原因
2.各種動物モデルの開発の経緯
(1)炎症性疼痛モデル
(2)術後痛疼痛モデル
(3)神経障害性疼痛モデル
(4)骨癌性疼痛モデル
3.各種疼痛モデルからみた疼痛機序と新たな薬物療法の可能性
(1)末梢レセプタ/チャネルをターゲットとした治療戦略
(2)脊髄をターゲットとして治療戦略
(3)上位中枢をターゲットとした治療戦略
【質疑応答】
27日【12:40~14:10】
【第2部】 変形性関節症の病態と臨床像
疾患の特徴と進行の実際、疼痛発現の機序を中心に
国立病院機構 相模原病院 福井 尚志 氏
【講座主旨】
変形性関節症(OA)は患者数の最も多い関節疾患であるにもかかわらず、その病態は不明で疾患を根本的に制御できる治療法は確立されていない。このため最近はOAの疼痛を軽減し愁訴の軽快を得るような薬剤の開発が注目されている。最近の研究によりOAでは疼痛閾値が低下し、疼痛刺激に対して過敏な状態となっていることが愁訴出現の原因の一つであることが示されている。このことが事実なら疼痛閾値の正常化はOAの治療において重要な選択肢の一つとなる。 本講座ではOAの病態と進行のメカニズムについて解説した後、OAにおける疼痛の発現機序に関する最近の知見をまとめる。また演者らが行った膝関節のOA症例のフォローアップ・スタディーから得られた知見にも触れる。
【講演内容】
1.変形性関節症とは?
・疾患の概要
・疫学
・OAの発症に関する現在の理解
・OAの進行に関する現在の理解
・治療の現状-保存的治療
・手術的治療
2.変形性関節症の臨床像
・実際の症例に見る臨床経過
・レントゲン上の進行
・レントゲン上の進行と愁訴の関連
3.変形性関節症における疼痛発現の機序と疼痛抑制療法
・OA関節の疼痛はどこから生じるか
・OAにおける疼痛発現のメカニズム
・OAにおける疼痛閾値の変化
・OAの疼痛発現に関する精神的要因の関与
・疼痛軽減を目的とした治療法に伴う潜在的な危険
【質疑応答】
27日【14:20~15:50】
【第3部】 関節リウマチ病態解析から
治療の現状および求められる薬剤プロファイル
国立病院機構 相模原病院 鈴木 隆二 氏
【講座主旨】
関節リウマチ(RA)で生物学的製剤の使用頻度は確実に増加している。免疫抑制効果から抗炎症作用をもたらす為、大きな治療効果を期待できる。しかし、全ての症例に効果を有する薬剤は未だに存在していない。また、様々な作用点の異なる治療薬の組み合わせを以ってしても、その副作用は払拭されていない。現状でも、新規メカニズムを有する治療薬の創製が望まれている。RAの病態は大きく①炎症と②破壊の二つである。これら二つの病態に対して効果を有する薬剤開発の開発には、その病態の成立が如何なるメカニズムに起因するのか?詳細な検討が必要である。私達は、RA罹患部に存在するRAに特徴的な間質系細胞に注目してきた。その結果、RAの二つの病態に重要に関わる分子としてLIGHTに注目している。本セミナーではRA病態解析からLIGHTについて、その治療薬としての可能性を述べたい。
【講演内容】
1.関節リウマチの病態
・関節炎症:滑膜炎と滑膜増殖
・関節破壊:破骨細胞
2.関節リウマチに特異的な細胞の存在
・RA特異的ナース細胞の存在と同定
・RA特異的破骨細胞の存在と同定
3.RA特異的ナース細胞とRA病態の成立
・滑膜炎とRA特異的ナース細胞
・破骨細胞誘導とRA特異的ナース細胞の関与
4.LIGHTとRA病態
・LIGHTはRA特異的ナース細胞の増殖因子である
・LIGHTはRA特異的破骨細胞の分化誘導因子である
5.LIGHTの創薬ターゲットとしての可能性
【質疑応答】
27日【16:00~17:30】
【第4部】 将来有望な鎮痛カスケードの動向と
整形外科から観た国内外における
慢性疼痛疾患の疫学と薬物療法の現況
尼崎中央病院 三木 健司 氏
【講座主旨】
整形外科臨床家が創意工夫のうえ行っている治療から、現に実際使用されている現状(いわゆるoff label use)を分析し、今後開発、治験すべきすでにコモンディゼィーズとなった疼痛疾患にたいする鎮痛薬、治療薬の方向を推察する。今後は生命予後を重点としたものから生活の質面を重点とした患者のニーズに適合する薬剤が将来必ず必要になってくる。
【講演内容】
1、整形外科疼痛疾患の疫学
※非常に多い整形外科疾患 全患者の中で「痛み」を主訴として医療機関する患者8割。 整形外科慢性痛症の病態
1-1慢性疼痛としての腰痛 「たかが腰痛、されど腰痛」
1-2意外に多い神経因性疼痛「たかが痺れと侮るなかれ」
1-3カウザルギーや反射性交感神経性ジストロフィーなど特殊な神経因性疼痛
1-4線維筋痛症などリウマチ病による慢性疼痛「患者は治療を求めている」
2、日本国内での慢性痛症の治療
※日本国内では保険診療の縛りがあるが、多くの疼痛専門家により行われている治療を紹介する。 鎮痛補助薬とは
2-1抗うつ薬
2-2抗けいれん薬
3、欧米で使用されている慢性痛症の治療
※各国違いはあるが、多くの新薬などが使用されている。注目しておく薬剤を紹介する。
4、オピオイドによって広がる展望
整形外科慢性疼痛患者にどのように使用するか
4-1 適応症
4-2 使用上の注意
5、期待される薬剤のプロファイルと
メーカーへの要望将来有望な鎮痛のカスケード
●COX2は神経因性疼痛に効果がある
●下降性疼痛抑制系(疼痛調節系)
●セロトニン系
●ノルアドレナリン系
●TRPV1系(炎症性疼痛の原因と考えられている)
●MAPKファミリー系
●グリア系(神経因性疼痛での IL-18によるグリア間情報伝達)
●インターロイキン系
●GABA系
【質疑応答】
28日【10:00~11:30】
【第5部】 心療内科から観た
慢性疼痛疾患の薬物療法の現況と心療内科的アプローチ
司誠会野上病院 長井 信篤 氏
【講演内容】
1、心療内科から見た慢性疼痛の考え方
2、心療内科における慢性疼痛の薬物療法
3、慢性疼痛に対する心療内科的アプローチ
【質疑応答】
28日【12:10~13:40】
【第6部】 ペインクリニシャンから観た
国内外における慢性疼痛疾患の疫学と薬物療法の現況
東京大学医学部附属病院 住谷 昌彦 氏
【講座主旨】
疼痛は医療機関を受診する理由のうち、最も頻度の高い身体症状である。疼痛は疾患の一症状であることが少なくないが、疼痛だけが病態を反映していることもある。このような病態(疾患)を慢性疼痛疾患と呼び、疼痛治療を適切に行えば患者のQOLは著しく向上させることが期待できる。 本発表では、がん性疼痛以外の慢性疼痛疾患の疫学および分類について概説する。特に、炎症性疼痛と神経障害性疼痛に着目し、その薬物療法と治療メカニズムについても麻酔科・ペインクリニックの観点から言及する。
【講演内容】
1.疼痛とは?
○疼痛の定義
○疼痛の分類(生理的疼痛、病的疼痛)
2.疼痛の評価方法
3.疼痛疾患の疫学
○慢性疼痛の疫学
○神経障害性疼痛の疫学
4.疼痛疾患の薬物療法 -作用機序からの考察-
5.疼痛治療の問題点
○集学的治療の必要性
○ペインクリニックの視点から
○痛みがもつ本質的な不確かさ
【質疑応答】
28日【14:50~15:20】
【第7部】 慢性炎症性疼痛発生における
BDNFの関与と脊髄内感覚回路の可塑性
熊本保健科学大学大学院 吉村 惠 氏
【講座主旨】
炎症性疼痛には痛覚過敏とアロディニアの症状が見られ、痛覚過敏に関しては末梢受容体の感作が示唆されているが、アロディニアに関しては不明であった。脊髄スライス標本を用いた実験から、深層に終末しているA-beta線維の軸索発芽がアロディニアの発生に関与している可能性がある。軸索発芽にはNGFの産生と、それに続く後根神経節でのBDNFが産生が関与しており、抗BDNF抗体を用いた軸索発現の阻止について話をしたい。
【講演内容】
1.正常での脊髄内感覚回路のシナプス結合様式
・A-beta線維の分布は
・C線維の分布は
2.炎症によって惹起される生化学的変化
・NGFの産生
・DRGでのBDNFの産生
・NGFおよびBDNF受容体の発現は
・BDNF受容体であるTrkBの発現部位と発現経過
3.炎症によって惹起される感覚回路の可塑的変化
・A-beta線維の軸索発芽
・A-beta線維の発芽の機能的意義
4.A-beta線維の軸索発芽はどのようにして阻止されるか
・抗BDNF抗体の作用
5.A-beta線維の軸索発芽の機能的意義は
・脊髄後角深層と膠様質の機能的差異
【質疑応答】
*各講師のご略歴*
【 川真田 樹人 氏 】
●学歴
1986年3月 京都府立医科大学医学部卒業
●職歴
1986年5月 京都府立医科大学付属病院 脳神経外科(研修医)
1988年4月 札幌医科大学医学部付属病院 麻酔科(研究生)
1997年4月 イエール大学(アメリカ)麻酔科 Postdoctoral research fellow
1999年5月 札幌医科大学医学部 麻酔学講座助手
2000年8月 札幌医科大学医学部 麻酔学講座講師
2007年11月 信州大学医学部 麻酔蘇生学講座教授 現在に至る
●学位
1996年12月 札幌医科大学博士(医学)(論医博 1664号)
●資格
1986年5月 医師免許証
2004年4月 日本麻酔学会専門医(新制度)
2005年1月 日本ペインクリニック学会認定医
2008年4月 日本麻酔学会指導医
●所属学会
日本麻酔学会(代議員),日本臨床麻酔学会(評議員),日本集中治療医学会,日本ペインクリニック学会,日本神経麻酔・集中治療研究会(評議員),世界疼痛学会,アメリカ麻酔学会,アメリカ疼痛学会,北米神経科学会,アメリカ生理学会
●主な研究
・専攻領域:麻酔学一般,神経麻酔,疼痛学
●賞
平成14年9月14日 第50回北海道麻酔学会賞
平成19年5月30日 第26回日本麻酔科学会山村記念賞
【 福井 尚志 氏 】
● 現在のご業務・研究活動
変形性関節症の病態解明とそれを通じた新たな治療法の確立 変形性膝関節症の症例に対する治療
● ご略歴(可能な範囲で結構でございます) 東京大学医学部卒業、ワシントン大学留学後2002年より現職
【 鈴木 隆二 氏 】
●現在のご業務
・研究活動 厚生労働科学研究補助金事業に参画し、
1.免疫アレルギー疾患予防・治療研究事業として
①関節リウマチ、
②金属アレルギーの病因解明と病態解析を行っている。
2.新興・再興感染症研究事業として
③フラビウイルス感染症の病態解析を行っている。
● ご略歴
日本大学農獣医学部獣医学科(1979)卒
東北大学歯学部大学院研究生(微生物学教室;熊谷勝男教授)(1979~1987)
医学博士(東北大学 1986)。
塩野義製薬株式会社医科学研究所・主席研究員・免疫学部門長(1983~2001)
武田薬品工業株式会社医薬研究本部創薬第一研究所・主席研究員(2002~2004)
独立行政法人国立病院機構相模原病院臨床研究センター(2004~)
米国テキサス大学MDアンダーソン癌研究所・客員助教授(免疫部門および外科部門)(1989~1991)
大阪大学医学部・非常勤講師(整形外科学)(1996~2001)
神戸大学大学院自然科学研究科・客員教授(生命科学)(1998~2002)
国立感染症研究所・客員研究員(ウイルス第一部)(1998~)
東北大学大学院医学研究科・非常勤講師(1990~)。
【 三木 健司 氏 】
● 現在のご業務・研究活動
厚生労働省班会議「複合性局所疼痛症候群(CRPS)」の診断基準作成
日本線維筋痛症学会 評議員
日本運動器疼痛研究会 評議員 整形外科痛みを語る会創設メンバー
日本運動器疼痛研究会評議員 大阪大学手の外科研究会世話人
日本整形外科学会 整形外科専門医
日本リウマチ学会 リウマチ専門医
日本整形外科学会 認定リウマチ医
阪神地区整形外科を語る会 世話人
● ご略歴
【平成2年】 国立滋賀医科大学医学部卒業
【平成2年】 大阪大学整形外科医局入局
【平成2年-4年】 国立大阪南病院整形外科臨床研修医
【平成4年】 姫路赤十字病院 整形外科医員
【平成5年-6年】 行岡病院整形外科医員(線維筋痛症の治療の第一人者である行岡先生に師事、手の外科医として再接着やRSDの治療に従事)
【平成6年】 大阪大学整形外科 手の外科医員
【平成6年-10年】 兵庫医大第二解剖学助手(痛みの研究の野口光一教授に師事)
【平成10年-12年】 アメリカ メリーランド大学神経化学研究員(雑誌PAINのChief EditorであるDubner教授に師事)
【平成12年】 兵庫医大第二解剖学助手
【平成12年-15年】 大阪府立母子保健総合医療センター整形外科医長、付属研究所環境影響部門兼務研究員
【平成16年】 尼崎中央病院整形外科 医長、行岡病院リウマチクリニック(線維筋痛症、慢性疼痛外来)
【平成18年6月】 大阪大学疼痛医療センター院外専門医 兼任
【平成19年2月】 尼崎中央病院整形外科第2部長
【 長井 信篤 氏 】
※近日更新いたします。
【 住谷 昌彦 氏 】
● 現在のご業務・研究活動
H15年から麻酔科ペインクリニック領域で主に神経障害性疼痛の診療に従事し、ヒト難治性疼痛の臨床研究、特に視覚と疼痛のcross-modalな相互作用の解明に一貫して取り組み、視覚入力を利用した神経リハビリテーション治療の開発・実践を行っています。 H18年9月には複数の診療科と協力して難治性疼痛をmultidisciplinary(多角的多面的)に診療する大阪大学医学部附属病院疼痛医療センター(センター長:麻酔科 眞下節教授)を立ち上げた後に、H20年に現職となり認知神経科学的技法を用いた神経リハビリテーションの開発と実践、薬物の適正使用を土台とした集学的な疼痛医療を実践しています。
●ご略歴
2000年 筑波大学医学専門学群 卒業
2000年 大阪大学医学部附属病院 麻酔科 研修医
2001年 国立大阪病院(現 大阪医療センター)麻酔科 研修医
2002年 国立療養所刀根山病院(現 刀根山病院)麻酔科 医員
2003年 大阪大学大学院医学系研究科 生体統御医学麻酔集中治療医学講座 医員
2006年 大阪大学医学部附属病院 疼痛医療センター 医員(兼任)
2008年 東京大学医学部附属病院 麻酔科・痛みセンター 助教 現在に至る
● 本テーマに関しての学会・協会でのご活動 日本ペインクリニック学会神経障害性疼痛薬物療法ガイドライン委員会 委員
【 吉村 惠 氏 】
● 現在のご業務・研究活動(可能な範囲で結構でございます)
大学院教授として大学院生の研究の指導と自分自身で実験を行っている。また、分野所属の教員との共同研究を行っている。研究分野は脊髄後角における痛覚伝達の機序と、慢性疼痛時に誘起される感覚回路の可塑的な変化を、脊髄スライスやin vivo標本からパッチクランプ記録法を用いて解析している。
● ご略歴
1976 年:久留米大学医学部卒業
1980年:久留米大学大学院修了(医学研究科)
1980年:久留米大学医学部助手(生理学第一講座)
1984年:久留米大学医学部講師(生理学第一講座)
1994年:久留米大学医学部助教授(生理学第一講座)
1996年:佐賀医科大学医学部教授(生理学講座)
2001年:九州大学医学研究院教授(統合生理学分野)
2009年:熊本保健科学大学、大学院保健科学研究科教授 外国渡航歴
1981年7月~1983年7月:米国テキサス大学医学部ガルベストン校薬理学研究室および 米国マサチューセッツ工科大学神経薬理学研究室に留学
1986年5月~1990年6月:米国コロンビア大学医学部生物学研究所およびハワードヒューズ医学研究所研究員(兼務)